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日本でのICO(新規コイン公開)の現状

2017年11月16日

金融庁は新たな規制を模索中

今年9月に中国と韓国の政府はICO(新規コイン公開)を相次いで禁止したが、日本では当局がICOを禁止するような動きは、今のところ見られていない。しかし、投資家を保護するためにも規制は必要であり、どのような規制が企業の新たな資金調達手段となりうる技術革新を妨げることなく、一方で詐欺行為などから投資家を守るために適切なものであるかを、当局は模索しているところである。

金融庁は2017年11月に公表した金融行政方針のなかで、ICOに言及している(注1)。「ICOで発行される一定のトークンは資金決済法上の仮想通貨などに該当すると考えられ、その実態を十分に把握していく」と、2016年の資金決済法ではじめて定義された仮想通貨の一つとすることで、規制対象であることを明らかにしたうえで、「詐欺的なICOに対しては、関係省庁と連携して対応していくとともに、業界による自主的な対応の促進や利用者及び事業者に対するICOのリスクに係る注意喚起等を通じて、利用者保護を図っていく」と警戒色を滲ませた方針を示した。

金融行政方針の発表に先立つ2017年10月27日には、「トークンは価格が急落したり、突然無価値になってしまう可能性があります」という注意喚起が、金融庁のホームページに掲載された。

金融庁はICOを仮想通貨と新たに定義して、資金決済法の適用対象と位置付けたものの、具体的にそれを規制する条文はない。企業などからは、ICOを通じた資金調達の関心は高い模様であり、金融庁にも問い合わせが続いているという。その際には、資金決済法、金融商品取引法など既存の法律に照らし合わせ、一つ一つの案件ごとに違法性の有無を確認しているという(注2)。

継続する企業のICO発行

世界的な規制強化の流れのなか、日本ではICOを通じた企業の資金調達は増加している。最近の例を見ると、仮想通貨取引所「Zaif」運営のテックビューロが、約109億円を集めたことが、2017年11月7日の報道で明らかにされた(注3)。調達資金は同社のICO支援サービス「COMSA」のシステム拡充などにあてるという。

また、仮想通貨取引所を運営するQUOINE(コイン)がICOで約124億円を集めたことが、2017年11月9日の報道で明らかにされた(注4)。調達額は、直前まで過去最高額だったテックビューロを抜いた。調達資金は海外取引所との提携などに充当するという。

村がICOの共同研究に着手

岡山県にある西粟倉村は2017年11月1日、地方自治体ICO導入に向けた共同研究に着手することをプレスリリースで明らかにした。

西粟倉村は人口約1,500人、村の面積の約95%を森林が占める地方自治体で、「百年の森林構想」を軸とする林業六次化や、地域起業支援事業である「ローカルベンチャースクール」など独自の地域活性化施策に積極的に取り組んできた。今後も地域活性化への投資を継続するために、新たな資金調達手段として民間企業と共同で自治体ICO導入に向けた共同研究をという。

それ以外にも、3メガバンク、多摩大学、デロイトトーマツコンサルティングなど20社・団体は、ICOの活用や制度面での課題を明らかにするために、研究会を立ち上げている(注5)。

世界的な禁止、あるいは規制強化の流れとやや逆行するようであるが、ICOを通じた資金調達への関心は、日本ではむしろ強まっているのである。


(注1)「平成29事務年度 金融行政方針」p33
(注2)「ICO、規制の網どこまで?、金融庁、健全な発展へ対応苦慮(金融取材メモ)」、日本経済新聞、2017年11月8日
(注3)「テックビューロ、ICOで109億円」、日本経済新聞、2017年11月7日
(注4)「QUOINE、ICOの資金調達額124億円に」、日本経済新聞電子版、2017年11月9日
(注5)「3メガや多摩大など20社・団体がICO研究会-新たな資金調達手段 制度課題など検討」、日本経済新聞電子版、2017年11月9日

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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