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金融行政方針に見るフィンテック関連法整備の姿

2017年11月14日

新たな法整備の動き

金融庁がさらなるフィンテック関連法整備を検討していると、日本経済新聞社が先月報じている(注1)。

それによると、現在、決済については、銀行が銀行法、電子マネー業者は資金決済法、クレジットカード会社は割賦販売法と複数の規制が混在し、縦割り規制の構図となっているが、今後は決済や送金などのサービスを一つの法律に再編成することが検討されているという。その際に、インターネット事業者らも同じ法律のもとで、同じ条件のもとでサービスを提供できるようになり、その結果、銀行とインターネット事業者らの連携が進みやすくなるという側面に加えて、両者間の競争が促されることで、銀行が提供している高コストの決済、送金サービスの料金引き下げを促し、利用者の利便性を促すという点も意図されているという。

金融行政方針でもさらなる法整備の必要性が示された

ところで、先週金融庁が公表した平成29事務年度金融行政方針では、この報道を裏付ける記述がみられた。将来的にはIT技術の進展等が金融システム、金融サービスや金融機関のあり方に抜本的な変革をもたらす可能性もあるなか、以下のように法体系の見直しの必要性が説かれているのである(注2)。

「現在の業態別の法体系はこうした変化に対応できず、例えば、業態をまたいだビジネス選択の障害となったり、規制が緩い業態への移動や業態間の隙間の利用等を通じて 規制を回避する動きが生じるおそれがある。また、環境の変化に対応していない規制が原因となって、ITを活用した合理化等が円滑に実現できない可能性もある。このため、金融に関する基本的概念・ルールを横断化するとともに、同一の機能・リスクには同一のルールを適用するとの考え方の下、イノベーションの促進と利用者保護のバランスを取りつつ、法体系を機能別・横断的なものにすることについて、金融審議会において検討に着手する。」

つまり、現在の業態別の法体系では、新しい金融面でのイノベーションが妨げられる可能性がある一方、規制逃れの動きも生じて、利用者保護に支障が生じることが指摘されているのである。

フィンテックを経済・社会の発展につなげる

またこの金融行政方針では、「フィンテックによる金融イノベーションの促進を通じて、利用者利便の向上や企業の成長力強化を実現し、我が国経済・金融の発展につなげていくことが重要である」と、さらに意欲的な方向性が示されている。

「イノベーションの促進には、金融機関とフィンテック企業とのオープン・イノベーション(協働・連携)を進めていくことが重要である」とし、その具体的な施策として、以下の3点を挙げている(注3)。

(ア)金融サービスのオープン・イノベーションを推進するため、平成 29 年改正銀行法等を円滑に施行するとともに、オープンAPIの促進に向けた環境整備を図る。
(イ)フィンテック企業等によるイノベーションに向けたチャレンジを後押しするため、FinTechサポートデスクやFinTech実証実験ハブを通じた、新しい金融事業・サービス の開始に対する支援を強化する。
(ウ)非対面取引に係る本人確認方法の見直しや、銀行代理業制度や店舗制度の課題 の検討等、フィンテック時代に対応した制度の点検・見直しを行う。

こうした金融庁の方針は、2年連続での銀行法改正に加えて、フィンテック普及とそれを通じた利用者の利便性向上と保護、さらにフィンテックを経済・社会の発展につなげることに向け、当局が相当に強い意志で法整備に取り組む考えであることを裏付けている。


(注1)「フィンテック普及へ新法、決済・送金、銀行も安く、金融庁」2017年10月13日、日本経済新聞社
(注2)「平成29事務年度 金融行政方針」、金融庁、p30
(注3)「平成29事務年度 金融行政方針」、金融庁、p31

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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注目ワード : FinTech(フィンテック)

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