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拡大する外国銀行の中国企業向け融資

2017年11月13日

中国の企業債務が突出して高い水準

世界経済は足もとで堅調を維持しているが、それが抱える潜在的リスクとして常に考えておかなければならないのは、新興国企業の過剰債務問題である。その際に、1997年に発生したアジア通貨危機の経験が参考になるだろう。新興国の非金融企業債務のGDP比率の推移をみると、グローバル金融危機後は上昇傾向を辿り、2016年第3四半期末で107.9%と、アジア通貨危機時の100%程度を既に上回っている(注1)。

ただしこの高水準は中国によってもたらされている面が強く、中国を除くと2016年第3四半期末で53.8%と一気に半減する。中国は168.1%である。経済規模の大きさも考慮すれば、新興国企業の債務問題の中心は、中国にあることが分かる。

中国当局は今春に海外投資を拡大する企業への融資を牽制

中国当局は今春に、海外直接投資を拡大させている中国企業に対して銀行が過剰な融資や社債引き受けなどをしていないか、点検していることを明らかにした。人民元安定のための資本規制の一環として、海外投資の拡大に歯止めをかける取り組みは、既に昨年末から実施されていたが、この際の措置は、それを一歩進めた側面がある。さらに、先月行われた共産党大会に向けて、政府が、金融部門での過剰の解消や不正・汚職摘発を進めていることの一環と考えられた。金融部門での過剰なレバレッジ対策については、既に春先以降進められており、その影響は債券市場の動揺という形で顕現化している。

外国銀行による迂回融資の拡大

海外直接投資に限らず、中国当局が銀行の過剰な信用拡大への対応として、国内銀行の融資拡大を抑制する姿勢を強めた結果、外国銀行がそれを穴埋めする形で、中国企業向け融資を拡大させている。フィッチ・レーティングのレポートによれば、外国銀行による中国本土向け融資残高は、2016年末の1.67兆ドルから2017年6月末に1.89兆ドルに増加した。これは、それ以前の史上最高水準であった2014年末の1.84兆ドルを上回ったのである(注2)。

外国銀行にとって中国向け融資は利鞘が高いことから、それを積極的に拡大するインセンティブがある。HSBC(香港上海銀行)、スタンダード・チャータードなどが、その代表例である。

人民元安による外貨建て債務拡大のリスク

ところで、アジア通貨危機の場合には、外貨準備が不足しているもとで、自国通貨の切り下げを余儀なくされたことが、外貨建て債務の急増に繋がったことがその起点となった。しかしその後は、アジア新興諸国で外貨建て債務の比率は趨勢的に低下しており、自国通貨安のリスクは軽減されてきた。

ただし、中国については、外貨建て債務は高水準に達しており、こうした外銀による中国向け融資の拡大によって、その傾向が一段と強まっている可能性が懸念される。その場合、米国での金融政策の見通しの変化などを受けて、ドル高傾向が強まることがあれば、それが中国企業の外貨建て債務を増加させ、世界経済を左右するほどの大規模な債務削減(ディレバレッジ)の引き金となる可能性があるだろう。


(注1)"Emerging Market Nonfinancial Corporate Debt: How Concerned Should We Be?", IFDP Note, FRB, June 2017
(注2)"Foreign bank loans to China hit high", Financial Times, November 10, 2017

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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