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進化するビットコイン市場:先物市場の創設

2017年11月10日

CMEグループがビットコイン先物取引の開始を目指す

シカゴ・マーカンタイル取引所を運営する米CMEグループは10月31日、仮想通貨ビットコインの先物取引(決められた価格で将来資産を売買する契約)の扱いを始める考えを明らかにした。他方、米シカゴ・オプション取引所の運営会社CBOEも2017年8月に、2017年中にビットコインの先物取引の開始を目指す方針を既に明らかにしていた。両取引所はともに米先物取引委員会(CFTC)の管轄下にあり、先物取引の開始にはその承認が必要になる。承認を経て、年内にも双方の取引が始められる見通しである。

CMEグループがビットコインの先物取引の扱いを始める考えを明らかにした直後に、ビットコインの価格は一段と上昇した。これは、先物取引の開始によってビットコインの取引量が増加するとの期待が、価格上昇期待へとつながったためと見られる。実際、CMEグループのような大手の取引所が先物取引を始めれば、金先物、原油先物などと同様に、比較的手軽にビットコイン先物を投資家が買うことができるようになる。

さらなるビットコイン市場拡大への動き

仮想通貨の先物やスワップなどのデリバティブの取引は、大手取引所以外では既に以前から始められていた。ビットコインのデリバティブは、直物と同様に中国勢が先行しており、日米がその後を追う構図であるという(注1)。中国の仮想通貨取引所OKコインの香港子会社などが先物を扱い、日本では仮想通貨取引所ビットバンクが扱っている。また米国では、レジャーXという会社が、2017年7月にCFTCの認可を受けて、仮想通貨オプション、スワップ、先物の取引・決済業務を行っている。

他方、ビットコインETF(上場投資信託)発行の動きも米国にある。ETF組成会社のREXは、ビットコイン連動デリバティブを投資対象とするETF2本の上昇を計画している。しかし米証券取引所(SEC)は、ビットコイン市場の規制が不十分という理由から、今のところはそれを認可していない(注2)。

ヘッジ機能がビットコイン取引への新規参入を促す

ビットコインは、ボラティリティが高いことが投資対象としてみた場合の大きな特徴である。一部の投資家は、まさにこのボラティリティの高さこそが利益獲得の源泉であると考え、ビットコイン投資を拡大させているのである(サーチ・フォー・ボラティリティ)。しかし多くの投資家にとって、このボラティリティの高さは、ビットコインへの投資を慎重にさせているとみられる。こうしたなか、大手取引所で先物取引を始めれば、価格下落リスクをヘッジすることができるようになるため、直物取引を含めたビットコイン取引全体を拡大させることが期待される。

取引量が拡大して市場が厚みを増せば、ビットコインのボラティリティが低下することも予想される。その場合には、ビットコイン市場への投資家の新規参入を促すことで、さらにボラティリティが低下するという好循環が生じることも考えられるだろう。

しかしながらそれは、他の金融資産と比較してボラティリティが高いという、投資対象としてのビットコインの投資妙味を低下させてしまうというジレンマの側面もあるだろう。

値幅制限導入を検討

ただし、大手取引所での先物取引開始が、ビットコインのボラティリティを低下させるかどうかは、実は確かではない。先物取引は、ヘッジを可能にするだけでなく、将来の値下がりを見込んでビットコインを売る取引を増加させる可能性もあるためだ。一般に先物商品は、相場下落に賭ける投機筋を呼び込みやすいのである。

CMEグループは、やはりビットコインのボラティリティの高さに対する懸念を持っているようである。報道されているところによれば(注3)、CMEグループはビットコインの先物取引に、値幅制限を導入する計画であるようだ。値幅制限は、前日終値からの変化率(上昇及び下落)が、7%、13%、20%に達するという3段階あり、このうち7%、13%の価格変動が生じた場合には、取引を2分程度停止し、20%価格変動が生じた場合には、取引を1日停止することが検討されている模様である。


(注1)「広がるビットコインデリバティブ、CMEも参入 直物は一段高か」、今晶、日経速報ニュースアーカイブ、2017年11月1日
(注2)「【バロンズ】ビットコイン、進むETFや新商品の開発」、ダウ・ジョーンズ債券・為替情報、2017年9月25日
(注3)「ビットコイン先物、値幅制限を導入か 米CME」、ダウ・ジョーンズ米国企業ニュース、2017年11月8日

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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