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加速するフィンテック関連法整備

2017年10月25日

2年連続の銀行法改正

フィンテック(FinTech)を、日本で普及させる際に障害になっているのではないかと広く見なされてきたのが、金融業とそれ以外の業種ができる業務を厳しく分けている、あるいは金融業の中でも様々な業態を縦割り的に分けている金融法制であった。しかしそうした法制度が今、大きく見直されてきている。銀行のフィンテック対応等を目的にして、2016年、2017年と2年連続で銀行法が改正されたのである。

5%ルールの緩和とオープンAPI

2016年銀行法改正のなかで最も重要なのは、5%ルールの緩和であろう。これは、フィンテック企業への出資を通じて、新しい金融サービスをグループ内に取り込みたいという、銀行からの要請に応えたものである。銀行が5%(子会社保有分を含む)、銀行持株会社が15%(子会社保有分を含む)を超えて金融関連IT企業等(銀行業の高度化・利用者利便性の向上に資する業務又は資すると見込まれる業務を営む会社)の株式を保有することが新たにできるようになった。

他方、2017年5月に成立した2017年改正銀行法は、金融庁の説明によれば、「フィンテックの動きが世界的規模で加速するなか、利用者保護を確保しつつ、金融機関とフィンテック企業とのオープン・イノベーション(連携・協働による革新)を進めていくための制度的枠組みを整備する」ことに主眼が置かれた。顧客からの委託を受けて、銀行口座の残高照会や給与口座の入金なども記帳される家計簿アプリなど、口座管理サービスや、インターネットを通じた送金指図の伝達などを行う電子送金サービスを行うフィンテック企業を電子決済等代行業者として、登録制が導入された。電子決済等代行業者には顧客情報の適切な管理や業務管理体制の整備などが求められる。一方銀行に対しては、電子決済等代行業者と連携するオープンAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)の体制整備を進め、銀行と電子決済等代行業者とが安全なデータ、アプリの連携を行い、双方の顧客に対して利便性の高いサービスを提供することが努力義務とされたのである。

フィンテック関連法の一本化を検討

このように、2年連続での銀行法改正と、フィンテック普及に向けた関連の金融法整備が急速に進み始めたなか、さらなる関連法整備を金融庁が検討していると、日本経済新聞社が報じている(注1)。

現在、決済については、銀行が銀行法、電子マネー業者は資金決済法、クレジットカード会社は割賦販売法と複数の規制が混在し、縦割り規制の構図となっている。決済や送金などのサービスを一つの法律に再編成することが検討されている。そうすると、インターネット事業者らも同じ法律のもとで、同じ条件のもとでサービスを提供できるようになる。その結果、銀行とインターネット事業者らの連携が進みやすくなるという側面に加えて、両者間の競争が促されることで、銀行が提供している高コストの決済、送金サービスの料金引き下げが促され、利用者の利便性が図られるという点も意図されている模様である。

現時点では報道で伝えられているのみであるが、これが正しいとすれば、2年連続での銀行法改正に加えて、フィンテック普及と、それを通じた利用者の利便性向上に向けて、当局は相当に強い意志で取り組んでいることを示していよう。こうした法整備の急速な進展は、日本のフィンテックが新たな局面を迎えていることを意味しているのかもしれない。


(注1)「フィンテック普及へ新法、決済・送金、銀行も安く、金融庁」2017年10月13日、日本経済新聞社

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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