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BBB格社債のプレゼンスと歴史的低スプレッドの持続性

2017年10月18日

BBB格社債の発行比率が約5割に

堅調な世界経済の回復と低金利の持続というやや矛盾した環境のもとで、グローバルな社債市場では、投資適格の中で最も格付が低いBBB格(S&P社、以下同様)社債の発行比率が高まるという、いわば質の低下が生じている。他方で、BBB格社債の利回りと最も格付が高いAAA格社債の利回りがほぼ一致するという、投資家の過剰なリスクテイクの兆候も同時に見られている。

投資適格社債の中で最も格付が低いBBB格社債の発行比率の推移をみると(図表)、欧米あるいはグローバルで、近年は緩やかな上昇傾向にあることが確認できる。特に上昇傾向が顕著であったのは欧州で、その比率は2017年7月末で48.4%と5割近くにまで達している。これは、2008年グローバル金融危機前の倍以上の水準である。米国でもその比率は、足もとで2002年のピークの水準を上回っている。投資適格社債の中で最も格付が低く、もう一段格付が下がれば投機的格付になるBBB格の社債の発行比率が高まっていることは、投資家が保有する社債の信用リスクが全体として高まっていることを意味する。こうした現象をIMF(国際通貨基金)は、最新のレポート(Global Financial Stability Report)の中で、警戒的なトーンで指摘している。


BBB格社債のスプレッドは大幅縮小

BBB格の社債の発行比率が高まっている背景として、発行体となる企業にとっての発行環境が改善していることが挙げられる。すなわち、BBB格社債に対する投資家のニーズが高い中、より低い金利で資金を調達できるようになっているのである。これは、低金利環境が長期化する中で、僅かであってもより高い運用利回りを求めて投資家が様々なリスク資産への投資を拡大するという、"Search for Yield"の投資行動によって促されてきた面が強い。しかしそこでは、やや過大なリスクテイクがなされている可能性は否定できないだろう。

Bank of America Merrill Lynch のグローバルBBB格社債指数によれば、最新の平均利回りは2.9%である。これは、過去20年間の平均値である5.1%と比べて著しく低い。また、最上位格付となるAAA格とのスプレッドは、2008年のグローバル金融危機時には平均で4%を上回っていたが、足もとでは僅か0.25%程度まで縮小しているのである(注1)。

このスプレッドがAAA格社債とBBB格社債の信用リスクを正確に反映しているかどうかについては疑問が残る。社債がBBBと格付けされた企業のデフォルト率は、2002年のピークで1%程度であった。他方、AAA格の企業については、1981年以降そのデフォルト率は0%であった。

低水準のスプレッドが維持され続けるのはナローパスか

現状では、世界経済は堅調に推移する一方で、物価上昇率は落ち着いていることから、金融政策の正常化も緩やかに進むという期待が強い。これが良好な社債市場の環境を支えているのである。

しかしこの先、景気情勢が上振れ、金融政策の正常化のペースが高まるとの見方が広がれば、国債利回りが上昇する中でBBB格社債のスプレッドは一気に拡大する可能性があろう。他方、それとは逆に、世界経済が減速した場合にも、信用リスクが高まることから、BBB格社債のスプレッドは一気に拡大する可能性があるのである。

投資家の過大なリスクテイク行動の下で、極めて低水準であるスプレッドが今後も維持され続けるのは、かなりのナローパスであると考えておきたい。


(注1)"The BBBs Rule Investment-Grade Bonds", Wall Street Journal, October 16, 2017

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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