1. HOME
  2. ナレッジ&インサイト
  3. 研究員の時事解説
  4. 木内登英のGlobal Economy & Policy I…
  5. ショイブレが残した言葉

ショイブレが残した言葉

2017年10月13日

ショイブレ財務相が辞任

今月中にドイツの財務相を辞任し、ドイツ連邦議会議長に転じることが決まっているショイブレ氏が、先日フィナンシャルタイムズ紙のインタビュー(注1)に答えたが、その中で、世界の過剰流動性のリスクに強い警鐘を鳴らしていることが注目される。

ショイブレ氏が財務相を辞任するのは、先月のドイツ連邦議会選挙を受けて、メルケル首相が率いる与党CDU/CSU(キリスト教民主党・社会同盟)が他党と行う連立協議と深く関係している模様だ。CDU/CSUは、FDP(自由民主党)と緑の党に連立を呼び掛けているが、FDPは連立の条件として、財務相のポストを要求していると報じられているのである。

欧州債務危機と重なる8年

ショイブレ氏がドイツの財務相に任命されたのは、2009年10月のことであり、ちょうど8年間、同職を担ったことになる。この2009年10月は、まさにギリシャが財政赤字額を突如2倍に修正した時期であり、これがギリシャ問題の起点となった。ショイブレ氏の財務相としての任期は、まさに欧州債務危機と重なるものである。そしてその辞任は、欧州債務危機問題の鎮静化を象徴しているとも言えるだろう。

ところでショイブレ氏は、内外で財政規律を重視する傾向が強いが、これについては保守政党であるFDPも同様であり、そのため、FDPが連立政権で財務相のポストを得る場合には、政策の継続性は一定程度維持されよう。但し、FDPは選挙公約に300億ユーロの減税を盛り込んでいることから、国内の財政政策については、やや緊縮度合いが緩和される可能性があろう。

他方でFDPは、ショイブレ氏に対して、より厳しい財政緊縮をギリシャに働きかけるように要求してきた。この点から、FDPが連立政権で財務相のポストを得る場合には、ギリシャの債務問題を巡って、新たな軋轢が生じる可能性も考えられる。

過度な金融緩和によるバブルを警戒

フィナンシャルタイムズ紙のインタビューでショイブレ氏は、中央銀行が市中に供給する過剰な流動性が、新たなバブル形成のリスクを高めている、と強く警鐘を鳴らしている。またそうした環境のもとでグローバルに拡大する公的、民間の債務についても警戒している。

ショイブレ氏は従来から、ECB(欧州中央銀行)の積極緩和に反対の姿勢であることを隠さず、異例な形で政策批判を展開したこともあった。他方ECBは、現在、金融緩和の正常化へとまさに政策を軌道修正しようとしている状況であり、この面からも、積極緩和に反対してきたショイブレ氏はその役割を終えたことを、この財務相辞任が象徴的に示しているとも解釈できるだろう。

しかしECBは、正常化方向に政策の軌道修正を図りつつも、それがもたらすユーロ高への警戒などから、依然としてかなり慎重に正常化を進める姿勢を崩していないようにも見える。この点から、ショイブレ氏の財務相辞任は、この先のECBによる正常化策の慎重姿勢を後押しする結果となる可能性も考えられよう。

(注1)“Schauble says debt and liquidity levels endanger global economy”,Financial Times,October 10,2017

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

この執筆者の他の記事

木内登英の他の記事一覧

このページを見た人はこんなページも見ています