1. HOME
  2. ナレッジ&インサイト
  3. 研究員の時事解説
  4. 木内登英のGlobal Economy & Policy I…
  5. 規制強化が仮想通貨に打撃

規制強化が仮想通貨に打撃

2017年09月19日

中国での規制強化が仮想通貨に大きな打撃

当局による規制強化の動きが、足もとの仮想通貨の価格に大きな影響を与えている。中国当局は9月4日、仮想通貨で資金調達を行う「ICO: Initial Coin Offering(新規コイン公開)」を違法行為と判断し、個人や団体に禁止令を出した(本コラム「岐路に立つICO(新規コイン公開)」、2017年9月11日参照)。さらに8日には中国の主要メディアが、「中国当局はビットコインなどの仮想通貨と人民元との交換業務を行う、国内のすべての取引所を当面閉鎖することを決定した」と報じた。実際14日には、仮想通貨「ビットコイン」を扱う中国の大手取引所「BTCチャイナ」が、9月末から売買を全面停止すると発表し、報道の正しさが裏付けられたのである。さらにその他の取引所大手の「火幣網」と「OKコイン幣行」も、中国の金融監督当局の求めに応じて10月末までに仮想通貨と人民元との取引をやめると15日に発表した。

 

またそうしたタイミングで、米銀大手JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は12日に、ビットコインを「詐欺」と言い切り、またその価格の高騰は「チューリップバブルよりひどい」と酷評したことも影響して、仮想通貨の価格は大きく調整する結果となったのである。

他国での規制強化の動き

中国当局は、ICOを違法行為と断定し、また仮想通貨の交換所を閉鎖させるという強硬策を決定したが、他国の規制当局も同様の措置を講じる可能性はあるのだろうか。中国規制当局の対応は、中国独自の事情によるところも大きいことは確かであろう。ICOに関わる犯罪行為は、中国で特に顕著であった可能性が考えられる。また、仮想通貨の交換所の閉鎖は、違法な人民元の海外流出の抑制という、中国の為替政策、資本規制と関わる措置である。習近平国家主席は、共産党大会の直前のタイミングを狙って、経済を混乱させかねない仮想通貨への強硬策を打ち出し、政治的なアピールを図ったことも考えられる。

他国では、仮想通貨の交換所閉鎖などといった強硬措置がとられることは考えられない。しかしICOについては、中国と同様に他国の金融当局も相当に警戒感を強めているとみられる。米証券取引委員会(SEC)は7月に、ICOのトークンは一種の証券であり、その販売には証券法が適用されることを確認している。また8月には、ICOに関わる詐欺行為について投資家に注意を喚起したのである。

さらに英国の金融行動監視機構(FCA:Financial Conduct Authority)は、投資家・消費者保護の観点から、かなり厳しいトーンでICOについて注意喚起を行っている。以下ではその内容を概観してみたい。

英国FCAの警告

英国のFCAは、金融を規制する政府から独立した機関で、その前身は金融サービス機構(FSA:Financial Services Authority)である。FCAは9月12日、"Consumer warning about the risks of Initial Coin Offerings"と題するレポートを公表している。

まず、将来のサービスを受け取る前払いのバウチャーとも言えるトークンについては、しばしば全く実質的な価値がないとしている。さらにICOは非常にリスクが高く、投機であると断じている。そして投資家に対して、リスクを十分に認識したうえで、トークンの価値を決める発行企業の業務計画について十分なリサーチを行う必要があるとしている。そのうえで、業務計画、技術、経営者の人となりについて、いずれも高い質があることを確信した場合にのみICOに投資すべきであるが、それでも投資資金をすべて失うことを覚悟してのぞむべきである、と極めて警戒的なアドバイスを個人に対してしているのである。

リスクの整理

さらにFCAは、ICOのリスクを以下の通りに整理し、個人に注意を喚起している。


【規制されない領域の存在】:ほとんどのICOはFCAの規制対象とはなっていない。
【投資家保護がない】:ICOに対する投資では、既存の投資家保護の対象となる可能性は極めて低い。
【価格変動の激しさ】:仮想通貨と同様に、ICOのトークンの価格は極めて変動が激しい。
【詐欺のリスクが高い】:トークンを発行する企業の中には、そもそも調達した資金で新規ビジネスを行う計画がないものもある。
【不十分な計画書類】:ICOは、"white paper"と呼ばれる極めて簡単な計画のみを提示することだけで実施できる。この"white paper"は概して不完全でミスリーディングである。
【初期段階の計画】:典型的なICOの計画は、極めて初期段階のものであり、またそのビジネスモデルは実験的である。個人は、投入資金をすべて失ってしまう可能性が十分にある。

このようにFCAは、極めて厳しいトーンでICOのリスクを投資家に伝えているのである。恐らく主要国の金融当局の基本的な姿勢は、こうした英国当局の姿勢に近付いていくのではないか。

ICOのリスクが各国の金融当局によって指摘され、また規制が強化される方向が一段と強まれば、トークンとの交換のために購入される仮想通貨の価値は、さらなる打撃に見舞われるだろう。

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

エグゼクティブ・エコノミスト

この執筆者の他の記事

木内登英の他の記事一覧

注目ワード : 仮想通貨

仮想通貨に関する記事一覧

このページを見た人はこんなページも見ています