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岐路に立つICO(新規コイン公開)

2017年09月11日

中国当局がICOを禁止

中国当局は9月4日、仮想通貨で資金調達を行う「ICO: Initial Coin Offering」を違法行為と判断し、個人や団体に禁止令を出した。資金調達手段の新機軸という側面と、犯罪に利用されるという側面とを併せ持ち、世界的に急成長を遂げてきたこの枠組みは、岐路に立たされたように見える。

ICOの抱える潜在的なリスク

ICOは、企業が簡単な事業計画書をインターネット上に公開し、個人や企業から広く資金を集めるクラウドファンディングの一種であるが、トークンを発行し、それをビットコインやイーサリアムなどの仮想通貨と交換することで資金を集める点に特徴がある。トークンの保有者には、株式のように出資額に応じた権利(株主議決権、配当受取り)が付与される訳ではない。その企業が将来提供する財やサービス(例えば、開発中のソフトウエアの利用権、仮想世界の土地所有権)を得ることができるという点が、トークンの価値の源泉となっているが、その価値の評価は難しく、価格形成には相応に不確実性があるように思われる。

また将来的にはトークンが取引されることが期待されることから、その値上がり益がトークン購入の大きなインセンティブになっていると見られる。そして値上がり益を期待して、トークンを購入するために個人や企業はビットコインやイーサリアムなどの仮想通貨を調達するため、こうした仮想通貨の価格も歪めている側面もあるだろう。

各国で当局の監視強化の動き

今回、中国当局がICOを禁止した背景には、それが詐欺などの犯罪にしばしば利用されることがある。先月には中国の金融技術産業協会は、ICOの規制強化を呼び掛けていた。こうした金融面での規制強化は、最近の海外直接投資に関わる中国企業向けの融資抑制やシャドーバンク規制など、来月の党大会に向けた政府の取り組みの一環と位置付けられる。また仮想通貨は、資本規制を回避して、資金を海外に流出させる手段にも使われることから、当局の監視の目はとりわけ厳しくなっているのである。

フィナンシャルタイムズ紙によると、米国でもSEC(米証券取引委員会)は7月に、トークンの販売に証券法が適用されることを確認した上で、8月にはICOに関わる詐欺行為について、投資家に注意を喚起した。

カナダとシンガポールの当局も、8月には一部のICOは、証券として分類・規制される可能性があることを認めた。またイスラエルでは、ICOを調査し、結果次第で規制を変更する可能性があると発表したという。

投資家保護の法制整備の必要性

日経QUICKニュースによれば、日本のICOの場合には、トークンは少なくとも当初は売買できないことから、資金決済法上の仮想通貨には当たらないとの解釈のもとで、仮想通貨交換業者には必要な国への登録義務を回避し、各種コストを節約する動きもあるという。ICOには、こうした規制上の曖昧さという問題もある。

ICOのさらなる発展のためには、投資家保護の観点を中心に、一段の法整備が必要になるだろう。

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

エグゼクティブ・エコノミスト

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