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フィッシャーFRB副議長の辞任と次期議長人事

2017年09月07日

フィッシャー副議長が辞任表明

9月6日、米連邦準備制度理事会(FRB)のスタンレー・フィッシャー副議長は、10月半ばをもって辞任する考えであることを突然表明した。副議長としての任期は、2018年6月であった。辞任は個人的な理由によると公式的には説明しているが、実際には、政府、共和党の金融規制緩和への強い反対姿勢が背景にあると考えられる。最近のFT紙へのインタビューでもフィッシャー副議長は、共和党の金融規制緩和について、「極めて危険で極めて短視眼的」と強く批判している。フィッシャー副議長が辞任すれば、FRB議長、副議長を含む7つの理事のポストのうち、4つが空席になる、という異例の事態に陥る。

政府とFRBとの対立は金融政策から金融規制緩和へ

今回の事態は、FRBと政府との間の対立が、金融政策から金融規制緩和へとその重点が移っていることを窺わせるものである。金融政策については、大統領選キャンペーンの際には、トランプ大統領は、FRBが民主党政権のために過度な緩和を維持していると批判指摘していた一方、政権発足直後には一転、低金利維持を望むと発言もしていた。しかしその後は、FRBの短期金利の2回の引き上げ実施やバランスシート縮小の計画発表を受けても、トランプ大統領は、金融政策についての言及は控えるようになった。さらに足もとの物価上昇率の下振れを受けて、FRB内からも利上げに慎重な姿勢が示唆されており、追加利上げ期待も足もとではやや後退している。またバランスシート縮小については、共和党内では相応に支持が得られるとみられる。

他方で、先般のジャクソンホール・シンポジウムではイエレン議長は、全体テーマと関係なく、敢えて「金融システムの安定」についての講演を行った。その中で比較的穏当な形ではあったが、政府による金融規制緩和を牽制する内容となった。一方、金融監督担当の副議長には、金融規制緩和に前向きとされる元財務省高官のランダル・クオールズ氏を政府は既に指名しており、上院での承認を待っている状況である。

金融政策への直接的な影響は小さいか

フィッシャー副議長は、金融システムの安定維持も視野に、金融政策面ではイエレン議長よりもタカ派の傾向が強かった。そのフィッシャー副議長が退任すれば、FOMCの政策の重点は幾分ハト派にシフトするといえるだろうが、大きな影響はないだろう。

他方フィッシャー副議長の辞任によって、金融規制緩和を巡るFRB内での議論では、イエレン議長は重要な後ろ盾を失うことになるのではないか。また金融規制に限らずFRB内でのすべての業務に関して、イエレン議長は信頼できる相談役を失うことになるのかもしれない。

現時点ではイエレン議長の続投を見込む向きが多い

フィッシャー副議長の辞任が、次期議長人事に与える影響については、今のところは明らかでない。イエレン議長は、2018年2月までの任期を全うする考えを以前から示しており、フィッシャー副議長に続いて辞任するようなことはおよそ考えられない。

他方、トランプ大統領が次期FRB議長の有力候補の一人と明言していたゲリー・コーンNEC(国家経済会議)委員長については、候補者から外される見通しであると9月6日付のウォールストリート・ジャーナル紙が報じている。これは、バージニア州シャーロッツビルで起きた白人至上主義者と反対派の衝突事件で、トランプ大統領が白人至上主義者を強く批判しなかったことに、コーン氏が強く反発したことがきっかけとなったとみられる。

この結果、金融市場ではイエレン議長が再任される可能性が最も高いと現時点では考えられており、ウォールストリート・ジャーナル紙のエコノミストに対する調査では、4分の3がイエレン議長の再任を予想している。

また、イエレン議長の公的部門での長いキャリアやFRBへの忠誠心から、政府から再任の打診があれば2期目を引き受ける、との友人や元同僚のコメントも報じられている。米国では議長が1期で終わるケースはまれであり、仮にイエレン議長が1期で終わることになれば、1934年以来で3人目となるという。

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

エグゼクティブ・エコノミスト

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