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蘇るシンセティックCDO(債務担保証券)

2017年09月04日

シンセティックCDO(債務担保証券)の発行が米国で再び急増

ウォールストリート・ジャーナル紙は、グローバル金融危機の際に悪名を高めたシンセティックCDO(債務担保証券)の発行が、米国で再び急増していることを報じている(注1)。CDOと言えば、最近では企業のChief Digital Officer(最高デジタル責任者)がまず思い出されるが、ここでいうCDOは、Collateralized Debt Obligationのことである。

CDOは、住宅ローン債権、企業向け融資債権を束ねて証券化し、それをリスクの程度に従って幾つかのトランシェに分けて、投資家に販売される金融商品である。この商品は、多くの債権を束ねることで高い格付けを得たが、ひとたび米国住宅市場が調整するとその価格は一気に下落し、まさに金融危機の象徴的な存在となったのである。

CDSを組み込んだシンセティックCDOとは

他方、現在復活しているのはシンセティックCDOであり、ここに組み込まれている資産は、貸出債権、債券などの現物資産ではなく、金融資産に連動したデリバティブ(金融派生商品)である。そのほとんどは、欧米企業の債務を対象とするCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)であるという。

CDSは、企業などのデフォルト(債務不履行)に伴うリスクを対象とした金融商品であり、その買い手は、対象となる企業が破綻し金融債権や社債などの支払いができなくなった場合に、金利や元本に相当する支払いを受け取ることができる。他方、買い手は一定の契約料を支払うのである。

CDSを組み込んだシンセティックCDOは複雑な商品であり、それを購入している投資家らが、果たしてそのリスクを十分に理解しているのかどうか、やや心配になる。

シンセティックCDOの複雑さ

通常の債務保証とは異なり、CDSでは保証の対象となる債務が特定されておらず、そのため、概念上のデフォルトを定義する必要が生じる。これは通常のデフォルトの定義よりは広く、金利減免や債権放棄などの債務リストラ、支払い遅延なども含まれる。CDSは相対取引であるため、同じ企業を対象とするものであっても、CDSごとにデフォルトと認定される条件は異なる契約となるのである。

CDOの組成者は、個々のCDSの契約内容次第で、それらを組み合わせて高格付けのCDOを作り出すことが比較的容易であるのに対して、投資家は、個別のCDSごとにその契約内容を投資家が正確に把握し、リスクを十分に認識できているのだろうか。商品の組成者、供給者と投資家との間には、情報の非対称性が生じやすいと考えられる。これはまさにグローバル金融危機の際に明らかになった問題であるが、同じリスクが再び蓄積されていないと言えるだろうか。

急増するCDO残高

証券金融市場協会(SIFMA)によると、米国でのCDOの残高は2014年に底を付けた後、2016年10-12月期に前年同期比+14.4%と2009年以来の増加率となり、2017年1-3月期も前年同期比+5.6%増加と、高水準を維持している。

歴史的な低金利が続く中、投資家は少しでも高めの金利を得られる金融商品を物色する「サーチ・フォー・イールド」の流れが続いている。その中で、再びCDOが人気を集めているものと考えられるが、過剰なリスクテイクになっていないかどうか、今後も注視していく必要があるだろう。


(注1)"A Crisis Villain Rises Again", Asian Wall Street Journal, August 29, 2017

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

エグゼクティブ・エコノミスト

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