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株式市場の機関化に向けた動き

2017年02月17日

中国の企業部門の負債率が高いことが、中国経済のリスクとしてよく挙げられる。

既に、デットエクィティ・スワップ等の対策が打たれているが、根本的な課題として、中国で間接金融の比率が高く、直接金融、特に株式市場での資金調達が依然として少ないことがある。2016年の社会資金調達規模(「社会融資規模」。非金融企業と家計の資金調達)を見ると、人民元貸出による調達額12.44兆元に対して、株式による調達額は1.24兆元(企業債券は3兆元)となっている。

中国の株式市場の改革については様々な努力がなされてきたが、個人投資家中心の市場から機関化を進めること、つまり、機関投資家の育成が一つの鍵を握っている。そして重要な機関投資家の一翼を担うことが期待される年金基金について、昨年来動きが出ている。

具体的には、公的年金である基本養老保険基金の株式運用が始まる。中国の年金制度は、地方政府レベルで管理される公的部分の基本養老保険、企業年金、個人貯蓄の三本柱からなる。

加えて、将来的な公的年金等の社会保障の資金不足に備えて、財政資金・国有株やその売却資金等を原資に運用を行う公的機関の全国社会保障基金(全国社保基金、2000年設立)がある。

全国社保基金は、その目的からして安全な資金運用が主であると見られるが、株式投資も行っている。全国社保基金の運用実績は、株価が大きく変動した15年が15.19%(直近データ)であり、設立以来の年平均のリターンは8.82%である。

一方、基本養老保険基金は、従来、株式・株式関連投資ができなかったが、15年の規定改正で純資産の30%までは可能になった。実際の運用は全国社保基金に委託して行われる。全国社保基金では、既に広東、山東省の基本養老年金の一部(それぞれ1000億元、500億元)も試験的に委託運用されており、これが全国に広がるとも言える。

全国社保基金が昨年12月6日、投資運用会社として投資信託運用会社等21社を選定したことから、運用開始が近いと見られていた。今年に入って、広西地チワン自治区が400億元を全国社保基金に委託したと発表され、北京市も500億元を委託したと報道されている。

足元では必ずしもすべての省が株式関連投資の意向を示しているわけではないと見られる。実際には、上述した金額から考えると、合計の投資額は数千億元程度と比較的小さく始まるものと見られている(なお、流通株式の時価総額は2016年末約39兆元)。

ただし、基本養老保険基金の合計規模は、2015年末で約4兆元であり、これを基に計算しても1兆元強の資金が株式市場に入る潜在性はあることから、長期的な影響は考えておく必要があろう。

特に、今後、中国で高齢化が進む中で、公的年金の財源不足対策として、現在政府等が所有している国有株を全国社保基金(あるいは基本養老保険基金)に、何らかの形でこれまで以上に移転していく可能性もある。

この点では、公的年金の基金が、国有企業の重要な株主となり、経営へ働きかけていくことで、国有企業改革の点からも重要な役割を果たすことも将来的には期待される。長時間を要するかもしれないが、株式市場における機関投資家と上場企業の質の改善へ一歩進むという点で注目される動向である。

Writer’s Profile

神宮健

神宮健Takeshi Jingu

NRI北京
金融システム研究部長
専門:中国経済・金融資本市場

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