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「積極財政と穏健な金融政策」方針の下で予想される臨機応変の中国マクロ調整政策

2011年12月13日

12月9日、中央政治局は、2012年の経済政策について「積極財政と穏健な金融政策」の方針を採ることを決定した。この決定は、現在開催中(12日~14日)の中央経済工作会議にも引き継がれると見られる。

いわゆるリーマンショック以降の各年当初の経済政策方針と実際の動向を振り返ってみると、4兆元の景気刺激に象徴される2009年は「積極財政・適度な金融緩和」であった。2010年は、文言は同じものの金融政策については、「適度な」に重点があるとされ、金融緩和の行過ぎの軌道修正が始まった。 2011年は、インフレ抑制が焦点となり「積極財政・穏健な金融政策」の下で年前半は金融引締めが継続した。その後、年後半に入ると選択的な金融緩和が打ち出され、続いて10月下旬にマクロ政策微修正の方針が示され、 11月下旬には預金準備率が3年ぶりに引下げられた。今回示された来年の「積極財政・穏健な金融政策」は、2011年と同じであるが、足元のマクロ経済環境は、過剰流動性とインフレ懸念のあった2011年年初と大きく異なっている。

まず、金融引き締め策を受けて、景気は鈍化しインフレ率はピークアウトしている。PMI(Purchasing Manager Index)は11月49.0と、製造業景気の拡大・縮小の分水嶺となる50を2009年2月以降初めて下回った。内訳を見ると受注指数・輸出受注指数等が低下する一方で製品在庫の積上がりが示唆されており、今後も景気減速が続くことを予想させる内容となっている。一方、インフレの状況を見るとCPI(消費者物価)とPPI(生産者物価)上昇率はともに、7月(CPI前年同月比6.5%、PPI同7.5%)をピークに、11月はそれぞれ前年同月比 4.2%、2.7%に低下している。

不動産市場も曲がり角を迎えている。当局は、マクロ政策の引締めに加えて、購入制限といった不動産市場対策を以て行過ぎた不動産価格を抑制しようとしてきた。最近では政策効果が顕著になり、住宅価格が下落し、それを受けて土地価格の低下も見られている。大手の不動産開発会社も手元のキャッシュフローを重視し始めており、今後は物件の売り急ぎも増えることが予想される。

次に、国際収支に変化が生じている可能性があることは前回のコラムで指摘した通りである。外為勘定を通じた市中への資金供給が今後、減少する可能性である。こうした状況の変化が、マクロ経済政策の(緩和方向への)微調整の方針や預金準備率引下げ背景になった。

さらに、不透明要因の存在である。当面の最大の不透明要因は欧州経済情勢である。国内要因としては、不動産市況・土地価格の動向にも注意が必要である。不動産・土地価格の大幅な調整は地方財政を直撃し、間接的に銀行の不良債権問題にもつながることから、今後はこれまでの引締め効果を慎重に見極めることが必要になろう。

2012年秋に政権交代を控えていることから、中国政府はこれまで以上に社会安定、そしてそれを支える安定的な経済成長を重視すると推測される。上述したように不透明要因のある2012年は、「積極財政・穏健な金融政策」という枠の中で、海外・国内の状況変化に応じて、あるいはそれに先んじて、臨機応変にマクロ経済調整を行うことが一つの特徴になろう。金融政策面では預金準備率が21%(大手銀行)と非常に高く、これを引下げることにより銀行システムに流動性を供給する余地が十分にあること、財政政策の面では財政赤字の対GDP比が2%前後(2009、2010年)で、こちらも短期的には財政政策発動の余地があることが臨機応変の対応を可能にすると考えられる。

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