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ロンドンの人民元オフショア市場設立の意向と中国の支持

2011年09月12日

第4回の英中間の経済財政金融対話が9月8日に開かれた。両国が共通の認識に達した点をいくつか挙げると、①英中双方は貿易・投資面で協力を深化させる。インフラ設備・ハイエンド製造・新エネルギー・省エネルギー環境保護等の分野で新たに協力し、2015年の両国間の貿易額を1000億米ドルにするとの目標の実現に努力する。②英国は、EUができるだけ早く中国の市場経済地位を承認することを支持する。③両国は金融面での協力の強化を継続し、資本市場の監査・監督管理面での話し合いを開始し、両国の資本市場の健全な発展を促進する。④英国は、人民元が適切な時期にSDR(IMFの特別引出権)に含められることを支持する。中国の金融機関の英国での業務展開を歓迎し、SWF(ソブリン・ウエルス・ファンド)を含む投資家に対する市場開放を継続する。また、投資家の権利利益を有効に保護する。

これらの両国間の経済・金融両面の関係強化に加えて、中国が、英国における、具体的にはロンドンにおける人民元オフショア市場設立を支持した点が注目される。今回、周小川人民銀行総裁は、ロンドンが金融センターの地位を利用し人民元オフショア市場を設立する願望を持っていること、英国がロンドン人民元オフショア市場に興味を持っていることを歓迎すること、人民銀行は英国と協力し、将来における当該市場の発展を支持し、また発生しうる金融安定リスクを解決すること等発言している。

ここで、人民元の国際化とそれに伴う香港における人民元オフショアセンターの設立を振り返ると、まず、人民元の他国への供給の面では、①2008年 12月に始まる中央銀行間の通貨スワップ協定、②2009年7月以降の人民元建て貿易決済の実施(2011年8月に試行範囲が全国に拡大)、③2011年 1月以降の人民元建て海外直接投資の認可が挙げられる。

一方、貿易相手国・地域の保有する人民元の運用面では、2007年以降の香港における人民元債発行に加えて、2010年以降は、香港に流入した人民元が中国大陸に還流しないという条件の下で、香港では他の外貨と同様に人民元建て金融サービスが提供できるようになっている。

最近では、8月に李克強副総理が、人民元オフショアセンターとしての香港の発展を支持したことが記憶に新しい。これを受けて、具体的には、 RQFII(人民元QFII)の試行がじきに始まると見られている。これは、香港で人民元を募集し中国国内証券市場へ投資するものである。また、これと並行して、中国国内からの投資の面では、香港株ETF導入に向けた準備も進んでいる。さらに、商務部によれば、人民元建ての対内直接投資も9月開始を目指している。

このように人民元の国際化は着々と推し進められており、人民銀行は、香港以外の地区の人民元オフショア市場設立を支持する態度を取っていると見られる。一方、今後、海外における人民元ビジネスの拡大が見込まれる中で、ロンドンも国際金融センターとしての将来的な機能拡充として人民元オフショアセンターの取り入れを考えていると考えられる。

振り返って日本はどうであろうか。国内資本市場の活性化・国際化については、ざっと振り返っても、2004年「金融改革プログラム -金融サービス立国への挑戦-」、2008年「金融・資本市場競争力プラン(市場強化プラン)」、2010年「金融資本市場及び金融産業の活性化等のためのアクションプラン」等が発表され、その一部は日本の資本市場の国際化やアジアとの連携を述べている。これらを通して、進むべき方向は打ち出されているものの、長引く政治不安定もあり、こうしたプラン自体の実行力が弱まっているのではなかろうか。また、これらのプランでも、特に人民元ビジネスについて明示的に述べているわけではない。

今後、貿易・投資面で、日本においても人民元の使用比率は上昇していくことであろう。こうした中で、日本の資金運用者・調達者とも人民元ビジネスは香港で行うということであれば、それは一つの方針であるが、その場合、東京国際金融センターは今後伸びが期待できる人民元ビジネスを持たないことになる。人民元の国際化にいかに対処するかの議論が必要であろう。

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