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健康管理と資産管理 -どちらも習慣化が効果的-

2019年01月08日

最近、腕時計型の健康器具を身につけている人を良く目にする。どれだけ歩いたか、どれだけカロリーを消費したかに留まらず、睡眠の状態をモニターして質の良い睡眠がとれているかなども自分で把握できるようになっている。健康状態を本人にフィードバックすることで健康な生活リズムを意識させ、激しいトレーニングをしなくても、自然と健康的な生活習慣が身についていくということで人気を集めているのだろう。


この健康管理というのはどこか個人の資産管理と似ている。先ず1つ目として、どちらも、普通の人にとってあまり時間をとって考えたり行動したりしたくないものである。簡単に言えば楽しくないものである。ここで、「普通の人」というのはその道のオタクではないということで、健康管理や資産管理を趣味の人が一定程度存在することは否定しないが、それ以外の人を指している。2つ目として、どちらも、それをやらないと長期的には本人が苦労するのだけれど、短期的には問題点を自覚し難いという特徴がある。他にも、どちらも専門家と一般人の知識レベルに差があったり、その結果として一般人にとって専門家の良し悪しを判断し難くかったり、という特徴もある。資産管理においてフィナンシャル・ヘルスという言葉を使うこともあるように、健康管理と資産管理を対比する見方自体は決して新しいものではないが、ここでははじめの2つの類似点に注目したい。これらは習慣化という手段の有効性を示唆するからである。


先の腕時計型健康管理ツールのように、デジタル化を背景として習慣化に誘導する有効な手段が提供されるようになってきている。ノーベル経済学賞を受賞したハーバート・サイモンが「情報の豊かさは注意の貧困をもたらす」と述べたように、情報過多の世の中が進むに従って、人が特定のことに注意を向ける時間はだんだん減っていく。結果として、人はできるだけ注意を浪費しなくていいように、判断を自動化したり、ルーティン化を進めたりするようになる。特に、健康とお金は、考えるのが楽しくもなく、今時点と将来の関係性を実感し難いという共通の特徴を持つ。これらに関しては、今と将来の関係性を把握でき、判断を助けて負担を軽減してくれるようなツールにニーズがあると言っていい。


実際、健康だけでなく、貯蓄の習慣化を狙ったスマホアプリも広がりつつある。例えば、米国のエイコーンズはおつりを貯めて資産運用アドバイスを提供するアプリだが、サービス開始から5年にも満たないのに、約400万もの口座を有する。アクティブな口座が半分くらいあると言われているので、かなりの普及スピードである。エイコーンズではおつりをそのまま貯めるだけでなく、おつりを一定倍した額だけ貯めたり、おつりとは関係なく毎月一定額を貯めたりする機能が、使い勝手の良いアプリで提供されている。また、数百ものオンラインショップと提携し、顧客がショップでサービスや商品を購入した時に発生するキャッシュバックをも合わせて貯めることができる仕組みになっている。更には、貯まった資金を運用する部分にはロボアドバイザーが用意されている。おつりの10倍とか、毎月10ドルとか、今現在の貯蓄に関する意思決定が将来時点での資産額とどのように関係付いているのか簡単に確認することができ、効果的に習慣化を促すツールとして設計されている。


今流行っている腕時計型のツールがどれだけ幅広い顧客の健康生活に寄与するかは分からないし、それ自体は廃れてしまう可能性だってあるだろうが、習慣化を狙いにしている部分には間違いはないだろう。同様に、日本でもエイコーンズと同様のアプリが複数登場しており、やはりお金に関する習慣化を狙っている。今は機能も限定された単なるおつりアプリと見えるサービスも、お金に関する習慣化というキーワードを通してみると少し違った将来性が感じられてくる。

Writer’s Profile

小粥泰樹Yasuki Okai

金融ITイノベーション事業本部 副本部長
研究理事
小粥研究理事の視点 掲載中

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